とてもかなわない
倉本聰の「前略おふくろ様」

2003年テレビ版「赤ひげ」を一話だけ放送していて面白くシナリオも全部読んでしまった(当時は見ていなかった、残念)。『浮浪雲』『大都会』『六羽のかもめ』もイイですね。
〈「六羽のかもめ」は再放送でつかまえたドラマでしたが弁ちゃん役の加東も良かった。その最終回は「さらばテレビジョン」。圧巻でした。〉
ズッコケといえば「仁義なき戦い」(深作欣二)シリーズを思い出します。幻冬舎文庫の笠原和夫のシナリオ(『仁義なき戦い』)を読むと広島弁のセリフが濃密で引き込まれます。組や派閥の何がどうしてどうなったのかよく分からなくてもセリフだけで読ませる凄さ。
〈「県警対組織暴力」(シナリオ笠原和夫 深作欣二)も読んでも面白いシナリオ。特にメインタイトルがでるまでの出だしの凄さ、ワクワクものですぞ。笠原和夫シナリオ集の続編はでないものか。深作も笠原もいなくなりそれぞれぶ厚い本が刊行されているけれどテレビの画面ではあの躍動感は味わえない、フレームを吹っ飛ばすような力技は銀幕の大画面でこそ。〉
〈追記 『笠原和夫 人とシナリオ』(シナリオ作家協会)が2003年11月に刊行されている、つい最近ある古書店の棚ではじめて知った。「県警対組織暴力」も収録されている。〉
その昔、FMで倉本聰と山本麟一がゲストの談話室があって一部テープにしてあるのだが山本麟一なんてホント豪傑、東映の悪役や脇を固める役者は室田、川谷をはじめ野口貴史や小林念持が有名だがこの人も凄い。強烈そのもの。
『愛すべきガキ大将』(*弥生書房)を読むと男は放浪していていいんだ、キツネも人里にでてくるようなのはこびてる、人間も同じだぜマイホーム型は男をダメにする、というラジオでの話を彷彿とさせる。奥さんとのなれそめなんてそのままドラマの世界です、ガキ大将は「うっせえ」といいながらも清々しいやさしさに満ちている感じ。
ちなみに大将とはもちろん山本麟一のこと、旭川ではそう呼ばれていたとある。
『愛すべきガキ大将』は元気がでる本です、疲れたときにおすすめしたい一冊。とてもかなわないけれど、こういう生き方だってできるんだという。エピソードの数々はとても紹介しきれるものではない。ぜひ手にとっていただきたい一冊。
恐い顔の男がひょいと優しい素振りをしてしまうという落差。そのイジラシサは室田や川谷とともに魅力でした。倉本のいう「履歴がでている顔」。その山麟(山本麟一)も今はいない。1980年没、享年53歳とある!
〈FMのタイトルは「日曜喫茶室」はかま満男 タナベミドリ=田辺みどり?(失礼ながら表記不明)。放送年度不明。1978か79年頃? 余談だがぼくは山本麟一が亡くなったことを久しく知らなかった、それを知ったのは古書店で『愛すべきガキ大将』を手にしたときだった、絶句。〉
この放送で倉本が「おっかない人にやさしいことをやらせるとホントにいいんですね」と語っていた。「山麟」という呼び名については学生時代に“ヤマリンが出た”という声があがると駿河台(明治大学)の不良学生が霧散したというエピソードから。伝説の人なのである。
『愛すべきガキ大将』にもこの伝説はある。
「大将がお茶ノ水近辺に現れると“山リンが出たァ”と、大の男の学生が逃げてしまって、その辺にいなくなると聞きました。」(北海の麟虎)参照〉
演技については「ダメだね。役者としての前に人間としていろんなことをたたきこんでおかないと」―そう語り倉本が「大謙遜、よく勉強してますよ」と評していた。
ぼくにとっては年老いた山本麟一を見る楽しみが無くなったが豪快でシャイでオッカナイ顔の山麟のまま銀幕のなかで生き続ける。
男は放浪してていいんだぜ、激しいメッセージではないか。
〈「仁義なき戦い」にも出演していました、その重量感あふれる姿で遠藤太津朗らとともに画面を引き締めていました。『愛すべきガキ大将』の巻末に「出演映画リスト」があるけれど、あっ、これにもこれにも出ていたんだという感じで懐かしさで一杯になりますね。なぜだかお世話になったんだなぁという気がしてきてくるから不思議。〉
また余計なことを書きますが、潮健児といい山本麟一といい映画俳優の枠を超えて熱く伝わってくるものがあるような気がする。スター俳優や監督も含めるとなおさらですが。「日本映画スクラップ文庫」というようなシリーズで刊行できないものでしょうか。役者、監督、ルポライター、スタッフ、シナリオライター、ファンなどそれぞれの立場で発信され埋もれてしまった数々の著作・記事を再編集して復刻できれば面白いと思うのですが。どんなもんだろう。
〈ちくま文庫が散発的ですが竹中労、殿山泰司、田中小実昌、小林信彦、笠原和夫などその路線にいくらか近い本を刊行している。〉