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とてもかなわない
高峰秀子
例えばまだ見ぬ「秀子の車掌さん」(1941年 成瀬巳喜男)について高峰は「監督は成瀬さんで、小品乍ら爽かなソーダ水みたいな作品で私は好きだった。」(『まいまいつぶろ』*映画世界社「私の歴史」参照、後に再編集されて*『つづりかた巴里』*潮出版社 引用は前者による)と書いている。
爽やかということばにぼくは弱い、これでは見ないわけにはいくまい。 どんな未知の世界が潜んでいるのやら。
〈高峰の著書について一言。『まいまいつぶろ』は昭和30年の出版だが装丁もいいし挿絵と写真が豊富で実にていねいに作られている、手にとると良さがわかります。タイトルはあげませんがジーンとくる小さい話にはまいりました。ちなみに高峰の最初の著作は『巴里ひとりある記』(昭和28年*映画世界社)、こちらも働き者が作った本ですね。手作りの感覚がよくて。新書判タイプも刊行されています。どれも絶版ですが。
追記 今年2004年の9月から開催された京橋フィルムセンターの『女優・高峰秀子』で「秀子の車掌さん」を見ることができました。ホント爽やかでした。〉

さて、本文中で触れた役者やスタッフの眼から切り取られた映画監督・作品のエピソードについては思いつくまま(硬軟を問わず)本のリストだけをあげておきたい。いずれノートに綴る機会もあることでしょう。
新藤兼人『ある映画監督の生涯 溝口健二の記録』*映人社(同じ著者の『ある映画監督 溝口健二と日本映画』(岩波新書)のモトになった原資料、映画にもなっている。)
三上真一郎『巨匠とチンピラ』 文藝春秋 小津安二郎との若き日々を綴る。
乙羽信子『どろんこ半生記』朝日新聞社 朝日文庫
清川虹子『みんな死んじゃった』*双葉社 (同じ著者で『恋して泣いて芝居して』*主婦の友社)
浦辺・菅井・河津『映画わずらい』*六芸書房
野中花『昭和・奇人、変人、面白人』*青春出版社
加東康一『いい酒いい友いい人生』*日本文芸社
吉村公三郎『あの人この人』*協同企画
聞き手 倉本聰『森繁久弥86才芸談義』小学館文庫
殿山泰司『三文役者の無責任放言録』*三一書房(同じ著者で『三文役者あなあき伝』1・2 筑摩文庫)
原一男編『インタビュードキュメンタリ 映画に憑かれて 浦山桐郎』現代書館(新藤ー溝口に対して原ー浦山のラインで構成された膨大なドキュメント。厚い本ですが、グイグイ引きずりこまれる面白さ。編集されてテレビ放映されたというが残念ながら未見。)
『黒澤明ドキュメント』キネマ旬報社(復刻版が三冊セットで刊行されている。何といっても出演俳優とスタッフの証言が読ませる。貴重な労作。なお、復刻版にキネマ旬報誌の記事を加えて再編集された『黒澤明集成』T・U・V(キネマ旬報社)も貴重。同じシリーズで『溝口健二集成』、『小津安二郎集成』((全2巻、いずれもキネマ旬報社)がある。
「永遠の人 木下恵介」(「キネマ旬報1999年3月上旬号」の特集)および『黒澤明と木下恵介 素晴らしき巨星』(キネマ旬報社)は黒澤と木下を考えるとき外せない。
〈余談ですが後者の森卓也「作家の二つの顔 木下恵介のコメディ・序説」が抜群に面白い、木下のコメディをとりあげその「技巧の冴えを検証する作業」がスリリングで息が詰まるほど。森が結びで言う「戦慄」に思わず身震いさせられます。どちらにも脱帽。)
千葉伸夫編『監督山中貞雄』実業之日本社(同じ編者・版元の『山中貞雄作品集全一巻』はシナリオ集。)
今村昌平編『サヨナラだけが人生だ』*ノーベル書房
(川島雄三については『松竹大船撮影所前大船食堂』山本若菜(*中公文庫)と『三文役者あなあき伝 part2』「わが町」 殿山泰司(*講談社文庫 筑摩文庫)も参照。)
藤本義一『川島雄三 サヨナラだけが人生だ』河出書房新社
(キネマ旬報誌上での三回にわたる対談が収録されている。掲載時に反響を呼んだように記憶しているけれど殿山泰司、小沢昭一、長部日出雄がゲスト、思わず引き込まれます。何度読んでも面白い。「生きいそぎの記」も収録されている)

このリストに入れる予定でいた潮健児の本はあまりに強烈ではみだしてしまった、番外編としてノートにしておきたい。 昭和芸能史といっても過言ではないがひとつの活動屋列伝として圧倒される。
〈雑誌での監督や俳優の特集も含めると膨大なものになる、ここではほとんど割愛した。また監督・映画評論家による著書はひとまず除外した。新藤、吉村のものはスタッフの括りでリストに加えた。まだまだ小津安二郎、マキノ雅弘、成瀬巳喜男、加藤泰、深作欣二をはじめ多くの方のリストが洩れている、追記増補の予定。〉