2010年8月
▽ 当サイトの下半期の収穫は中井貴恵のシリーズですが、この人を突き動かしているのは何だろうと不思議だったのですが「大人と子供のための読みきかせの会」(ブロンズ新社)の最初の章を読んでその一端に触れたような気分になった。いつものように著者は子どもに絵本を読みきかせていた、その一冊の絵本のラストで「いっきに涙があふれ出た」。世の中にはがんばっても出来ないことがいっぱいある、そうは分かっているのだけれど子どもにはやっぱりガンバレと声をかけてしまう、しかしがんばっても出来ないことの方が自分の人生のなかでは実際は多いのだ、その痛みやセツナサが子供時代の記憶とともにあふれ出た・・・もちろんわずか70余ページの大活字のその絵本を読んでまったく違う感想を抱く方もいるだろう。しかし中井の感じ方や読み方にこの人ならではのセンスがあるように思う、それは本とのつきあい方の原型を示しているばかりか、人と人をつなぎとめる根っこを感じさせるのだ。 <8月2日>
中井貴恵─桜田淳子─宮崎美子
△中井貴恵の本を一通り読み終わってその流れで友だちだという桜田淳子「アイスル ジュンバン」(集英社 2006年)と宮崎美子「『生き物』への流儀」(光文社 2000年)も読んでみた。“読んだ”なんて畏れおおい、“読ませていただいた”という気持ちに自然に変化しましたね。とてもかないません、この方々には。
最初、桜田の本をパラパラっとめくっていくと真ん中あたりに小さなアルバムが収められていてそのなかの一葉の写真になんじゃこれは?と目がとまった。生れたばかりの大泣きの赤ちゃんといっしょに母親(もちろん桜田)も同じ顔して大泣きしているのだ。本文を読んで納得しました。何度お産を経験しても感動につつまれてしまうわけですね。この母親にはホントかないません、伝統的な日本の母親像は健在です。
宮崎の本は生きものや自然につつまれているときの「温かさと安らぎ」(115ページ)はどこからくるものだろうと問いかける。ケニア、屋久島、モンゴル、ネパール、タンザニア・・・この旅人は異種の生命に寄り添うことの魅力にとりつかれているようだ。世界は<私>が思っているそれよりとてつもなく複雑で広く意外性に満ちている。著者は世界をもっと知りたい、自分の目で見たいと探訪する。なんという行動力か。
中井─桜田─宮崎のラインを追っていくと共通してどこか懐かしい匂いが伝わってくる、失われた人と人の濃いつきあいはどっこい生きている。そして卑しくないんだ、この女性たち。みなさんすでに50歳代なのでしょうがこんな女性たちがいるということだけでも心強い。 <8月18日>