▽1年ほど寝かしておいた本を読み始めたら面白くてほぼ一気に読んでしまった。「ドラマを愛した女のドラマ」(草思社 1995年 小林由紀子)、前回紹介した小松政夫さんの本は昭和35年が起点になっていますがこの本も同じ35年NHK入局から始まる昭和時代が背景。ドラマづくりひとすじの足跡を描いたものですが仕事というやつはそのまま戦いでもあること、闘ってきた方だけが語りうる迫力を感じました。いいことばが随所にありますね、鋭いナと思ったのはドラマづくりの核は企画にあるということを受けて「どんな企画を考えるときにも、私の頭にはいつも『家族』があった。どういう人の生き方であれ、その人間は親の血をひき、その性格を引き継ぎ、家族の影響を少なからず受けながら育っていく。思考、言葉、行動の基盤は家族とともにある」(11章 『水曜ドラマ』)というセンス、仕事と格闘し永年独りで生きてきた生活は自負もあったけれどスカスカだったとも語っています。著者がプロデュースした作品のほとんどを、有名な「おしん」も大河ドラマも見ていませんが鶴田浩二や(最初は敬遠していたという)川谷拓三、樹木希林、小林薫、TV版東京物語に出演を交渉した笠智衆、若山富三郎などのエピソードも著者ならではの語り口があります。NHK退職とその後を綴った終章に視聴率が何よりも優先する(民放の)現実に戸惑い「いい企画イコール採択とはならないこと」に直面しながらその当時 ─昭和63年頃から─ 流行ったトレンディドラマと視聴者の考察があります。大衆の期待のレベルをどこに置くかが肝心だという指摘は重層的で試行錯誤を経てきたことばだと思いました。視聴者を「バカ」にするのではなく─ 案外これが多いのではないか、たかがテレビだという侮りからくる不祥事は繰り返しでてくる ─追従するだけでもなく半歩先をリアルに指し示し誘導するという見方ですね。もうひとつ、抑制されてはいますが随所に「怒り」の人でもあることが伺える(例えば9章「おしん」)ところもこの本と著者の魅力ですね。まさに闘ってきた方の「ドラマ」そのもの。 <1月25日>
▽注目の新刊書 「のぼせもんやけん 昭和30年代横浜セールスマン時代のこと」 小松政夫(2006年6月 竹書房 1,575円)。血が騒ぐ本ですね、3年に一冊でるかどうか(?)の傑作。昭和35年4月の高校卒業後から39年1月植木等の付き人兼運転手になるまでの横浜が舞台。中古車販売店での2年間の超過熱セールスマン時代はこのままドラマになる面白さ、ミジメで貧しいけれど純情でとにかく熱くて。先にアップした「男の背中」(山下勝利)の小松政夫さんの章で師匠植木等さんからひとり立ちの話を車中で告げられ男泣きに泣いたと語っています。運転中の車を脇に止めて泣いたと、その間師匠は黙って待っていてくれたとあります。対談集「植木等のみなさんおそろいで」にも小松さんは登場していますがこの(師弟)対談もどこかしら「親子」のような絆の強さ、礼儀正しさが漂っていてイイ感じです。それにしても昨年、小松さんの芸能生活40周年だったとは・・・。 <1月20日>
▽年が明けて何かと愉しい話題が目につきます。1月11日から倉本聰さんのドラマが、それも「拝啓、父上様」という「前略、おふくろ様」の姉妹篇かな、と思わせるようなタイトルで放送されるとのこと。「前略」は1975(昭和50)年に始まり舞台は深川でしたが今度は神楽坂へ移しての「続編」? だけに期待しないわけにはいきません。岸本加世子さんの出演も楽しみ、昭和時代がプンプン匂ってくるようなこういう女優は貴重ではないか。倉本聰さんのドラマに「笑い」あるいはコメディタッチが復活することをどれだけ心待ちにしたことか。「浮浪雲」以来かな。
▽1月5日からフィルムセンターでは「歌謡・ミュージカル映画名作選」がスタート。個人的には「恋の大冒険」(1970年 羽仁進)が面白そう、山田宏一と渡辺武信が脚本を書き和田誠のアニメも見られるとのこと。他にエノケン、ロッパの作品も上映されます。2月4日まで。詳細はリンク集からどうぞ。
▽ミュージカルといえば今年はアルゴの公演が中止で誠に残念。先日2004年の「ユー・ガット・ア・フレンド」をビデオで見直して今の時代にストンと入ってくるなァという印象をもちました。公演の時はあれよあれよで呆然として見つめていましたが今振り返ると半歩(または1歩)早過ぎたミュージカルだったのかもしれない。輝いている少女たちの表情、動きには子どもの力の最大値、究極の可能性を引きだそうとしていることが感じられ衝撃というほかありません。ちょうど20回で一休みとなりましたが復活を祈るのみ。
▽1月4日発売の「サライ」(1/18号)に<激動の昭和「47の肉声」>というCDが付いています。ラジオの声でたどる昭和の記録ですが61分というから付録にしては凄い。(事件を主役にしたものとはいえ)アナウンサー名が明記されていないのが不思議ですが戦後すぐの宮田輝、和田信賢、藤倉修一(ガード下での街頭録音!)の声が聴けます。この号は著名人の「至福の一皿」特集もあって充実してますね。最後の晩餐だとしたら何を食したいか、なんて・・・。天っ晴れな企画に拍手。マイク職人たちにスポットをあてた名放送集もぜひお願いしたいもの。 <1月5日>
2007年1月
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